父との約束とTokina NEW AT-X270 PRO

2016年5月18日写真・カメラレンズ

昨年、父が長い長い旅にでかける数日前。

唐突に病室のカレンダーをさして「そろそろ誕生日か」「何がほしい」と、(実際は短い単語と手振りで)私に問うたことがありました。

それが最後のプレゼントになるであろうことは察していましたが、つとめて明るく「そうだなー、良いレンズにしようかな!」と伝えました。

せっかちな父らしく私の誕生日を待たずに「行って」しまったけれど、わたくし父の貯金からレンズ分だけちゃっかり預かっています(笑)

それから何を買おうか、ずーっと迷っていたのです。

単焦点好きのジレンマ

私が持っているレンズはほとんどが単焦点ですが、ここ一、二年でズームの必要性を感じることが多くなりました。ガーデニングショウとか植物園など、頻繁に画角を変えたいシーンではレンズ交換がネックになってしまいます。

父に言われたとき第一に浮かんだのはカールツァイス。でも同じ画角のレンズはある。

しかし単焦点の描写に引けをとらない良いズームなら、普段使いで必要だと思うようになりました。そう不便に感じるまで買うまいと思っていました。ツァイスはそのうち、余裕ができたら旧マクロプラナーかDistagonを買うんだもん。

といって純正大三元は高いし、まだ先かな…それとも自分のお金を足して、ううむ。


プレゼントの話はすこし保留にして、父の話に戻ります。

昔、手持ちのレンズを増やしたくて「使っていない単焦点のレンズはないの」と尋ねたことがありました。

同じくニコン党の父は野鳥専門で、重いバズーカと三脚を抱えて野山を歩き回っていた人です。当然、望遠しか持っていないだろうと思ったら「そんな短いのは…。あ、これ。これも。これも要らないから持ってって」と数本の単レンズをくれました。

カメラをやり始めのフィルム時代に使っていたのかな?
オールドレンズという古さでもなく、あー要らない感じだろうねという数本でしたが、そのうちの一本がこれ。

Tokina NEW AT-X270 AF PRO(28-70mm f/2.8)

約20年前のレンズになります。父のずさんな管理の割にホコリやカビなどは見られず、外観も綺麗な状態でしょ。縁はハゲてるけど。

Tokina NEW AT-X 270 AF PRO(Tokina AT-X PRO 28-70mm f2.8)
Tokina NEW AT-X 270 AF PRO(Tokina AT-X PRO 28-70mm f2.8)

型番を調べるときに手間取ったので、270・280系のシリーズをまとめますと。

  • 1988年発売/AT-X 270 AF = AT-X AF 28-70mm F2.8
    • 1994年発売/AT-X 270 AF PRO = AT-X AF 28-70mm F2.8 PRO
    • 1997年発売/NEW AT-X 270 AF PRO = AT-X AF 28-70mm F2.8 PRO NEW
      • 2000年発売/AT-X 280 AF PRO = AT-X AF 28-80mm F2.8 PRO
      • 2002年発売/AT-X 287 AF PRO SV = AT-X AF 28-70mm F2.8 PRO SV

1997年のモデルからフードが花型になり、SVの刻印はないので、私のは270 PRO NEWらしいです(EXIFではPRO II or SVとなっている)。今となっては1万円以下で中古市場に、もしくはジャンク品でハードオフに転がっているようなブツです。

ここらへんのレンズのクセについては以下のブログに詳しかったので、少し長めだけど記事を引用させていただきます。

閑話休題。ちょっと昔話になるがかつてトキナーにAT-X 280 PRO AF28-80mm F2.8というレンズがあった。ところがこのレンズ全く売れなかった。 理由はその写りにあった。

(中略)実際はとんでもなく個性的な癖玉で開放だとまるでピントがきてないかのようなソフトな描写をする。ソフト系のレンズを見たことが無い御仁は故障しているんじゃないかと思えるほどのソフトっぷりで世間の評判は地に落ちることになる。

しかし実際には高度な光学系により意図的にソフトに振っているのであってそのことを全くアナウンスしていなかったトキナーの戦略ミスであろう。その証拠に安価なレンズにより起こりうるソフトフォーカスと違ってピントの芯はちゃんとある、繊細な芯を残しながら回りにフレアを残すというソフトレンズ特有の特徴が見られる。

実はこの描写、Photoshopやソフトフィルターでは得難い表現で、フィルターやPhotoshopを使ってソフトにすると一様にソフトになってしまい芯が残らない。(トキナーの雪辱 AT-X24-70 PRO FX そしてアンジェニューの夢を見るか | ソラリ

作例もどき

Echeveria “affinis grey form”(’Silver Queen’)
D40 + 70mm, f/2.8
20150608-DSC_0464
52mm, f/2.8
20150608-DSC_0602
52mm, f/2.8

スマートフォンの画面ではわかりにくいと思うが、チルトシフトのフィルタを掛けたようになった。開放で周辺が光量落ちする。

20150608-DSC_0777
70mm, f/3.2
20150608-DSC_0528
35mm, f/4
20150608-DSC_0432
70mm, f/5.6

ここらへんからぱっきり

20150608-DSC_0764
70mm, f/5.6
DSC_0095
D40 + 52mm, f/6.3
20150608-DSC_0649
70mm, f/8
20150608-DSC_0530
35mm, f/10
20150608-DSC_0552
62mm, f/11

flickrに、これらの写真を含めたものをタグをつけて上げてあります。
Search: tokinanewatx270afpro | Flickr

青梅市吹上花しょうぶまつり2015 | Flickr のアルバムはまるまるこのレンズで撮っていて、同じ構図で絞りを変えてみたりしています。補正はしていませんので参考までにどうぞ。これから買う人はいないと思いますけど。


AT-X270 PROの開放の描写はとても好みで、粉っぽい多肉、白っぽい色の花は得も言われぬファンタジーな雰囲気になります。

逆光壊滅、寄れない重い…と使うシチュエーションを限定されますが、面白いレンズと思うんですけどね。でもなんでこんなん買ったんだろう、父。

そういえば父はカメラの話になると、「植物はいいけど、お父さんのレンズたくさんあるんだからはやく鳥をやれ、将来は全部オマエのものになるんだぞ」なんてよく言っていたものです。将来なんてもっと先でよかったのにね。